2017年12月10日日曜日

講師からのご案内 ① なぜ “作文のアトリエ” なのか

 
 大須作文教室は、三名分のテーブルを用意しています。
テーブルの広さは1.5m×1m、高さは70cm、材質は木製です。
通常はダイニングテーブルとして使用されるものを、3台用意しました。
研究生とアトリエ利用会員は、教室が開く午前9時から午後8時まで、
このテーブルを自由に使用することができます。
このテーブルに、資料とノートまたはノートPCを置いて、コーヒーを飲みながら、
タバコの煙をくゆらせながら、ゆっくりと考えてください。
考えることに疲れたら、教室を出て大須の商店街を散歩してください。
少し歩いてから座りなおせば、何かを書きだせるかもしれません。

 私が研究生のみなさんに伝えたいのは、作文という作業には、
ゆっくりとした時間と、凝縮した時間とが、あるということです。
作文の時間には、“緩”と“急”があるのです。
まずはこの緩急の感覚をおぼえてもらいます。

 作文の時間には、“書いている時間”と“書けないでいる時間”とがあって、
大切なのは、“書けないでいる時間”をしっかりと丁寧に過ごすことです。
書けないでいる時間とは、言い換えれば、
書けないままでひたすら考え続けている時間です。
この時間は、傍目には何もしていないように見えます。
しかしこのゆっくりとした時間の中で、書く人の頭脳は激しく思考を
めぐらせているのです。
 筆が遅いことを、引け目に感じる必要はありません。
締切日のぎりぎり手前まで書き出すことができないこと、
それは必ずしも悪いことではありません。
スラスラサクサクと書きだすことができないからといって、
劣等感をもつのはまちがいです。
筆の遅い人が、しっかりとした内容を書くことは、しばしばあるのです。

 大須作文教室は、たんに作文技法を教える場ではありません。
ここは、書けないでいる時間をしっかりと丁寧に過ごすための場所です。
この教室を“作文のアトリエ”としたのは、そうした理由からです。

(講師・矢部)